メンテナンス
住宅の屋根や空き地などを活用し、売電による利益を得るために太陽光発電設備を設置する家庭や事業者が増えています。
しかし、太陽光発電設備は設置したからといって終わりではなく、定期的なメンテナンスを行わなければなりません。
必要なメンテナンスを怠ってしまうと、発電効率が低下し売電による収益が低下するだけでなく、漏電による火災などにつながるおそれもあります。
そこで今回の記事では、太陽光発電設備に求められるメンテナンスはどのようなものがあるのか、専門業者へ委託した場合の費用相場なども含めて詳しく解説します。
目次
はじめに、太陽光発電設備を維持していくうえでのメンテナンスは法律上どのようなルールとなっているのか解説しましょう。
そもそも太陽光発電には、自宅または自社で消費する電力を自前で賄うことを前提とした「自家消費型太陽光発電」と、固定価格買取制度(FIT制度)など発電した電力を売却し利益を得ることを目的とした「投資型太陽光発電」があります。
このうち、50kW未満の小規模な自家消費型太陽光発電設備ではメンテナンスが法律で義務付けられていませんが、50kW以上の自家消費型太陽光発電設備、および投資型太陽光発電設備の場合は、「発電設備を適切に保守点検及び維持管理すること」が法律によって定められています。
メンテナンスの頻度としては年に2回の実施が法律によって義務付けられているほか、50kW未満の自家消費型太陽光発電設備についても4年に1回以上の頻度で実施することが望ましいとされています。
では、太陽光発電設備のメンテナンスとは具体的にどのような作業を行い、何を点検する必要があるのでしょうか。
日本電機工業会および太陽光発電協会がガイドラインとして定めている点検項目としては、以下のようなものがあります。
設備の周辺を取り囲んでいるフェンスや柵などの破損、異常が見られないかを目視によって確認します。
また、樹木の成長や新たな建物の建造など、周辺環境に変化がないか確認することも重要なポイントです。
パネル表面に亀裂や破損、焦げ跡などがないかを目視によって確認します。また、パネルの表面に鳥の糞やホコリ、落ち葉などが付着していた場合は除去したり、パネルの裏面に動物や虫などの巣、ゴミがあった場合もきれいに除去します。
そのうえで、発電性能に問題がないかを確認するために、パネル表面温度の測定や絶縁抵抗の測定、電圧・電流の測定なども行います。
ディスプレイの表示が正常であるか、設置環境に問題がないかを目視によって確認します。また、内部の基盤などに劣化や汚れがないかを確認し、必要に応じて清掃を行います。
パネルを設置する筐体に腐食や錆がないか、配線が損傷していないかを確認します。
架台の周辺に雑草などが生い茂っている場合には除去します。万が一、筐体や架台に腐食や錆、周辺の地盤沈下などが発生していた場合には、必要に応じて交換や施工を実施しなければなりません。
ゴミや水、ホコリなどが溜まっていないかを目視によって確認し、必要に応じて除去します。
また、落雷などによって端子、ヒューズホルダーに焦げ跡や変色がないかも確認のうえ、必要に応じて交換を行います。
擦れや断線、配線の被覆などに損傷がないかを目視によって確認します。
また、現在摩耗や断線が発生していなくても、劣化が進行し近い将来、摩耗するケースも考えられるため、新しい配線に取り替えるなどの対策を講じることもあります。
電線管やトレイ内部にネズミなどが侵入した形跡がないか、接合部などに腐食が見られないかを確認します。
筐体や架台、フレーム、基礎などの接地接続が正常であるか導通確認も行ったうえで、必要に応じて締め直しや交換を行います。また、接地抵抗も測定します。
パワーコンディショナや太陽光パネルを設置する基礎や土台に亀裂が入っていないか、摩耗が生じていないかを目視によって確認します。また、土台への取り付け部分のボルトに緩みや損傷が発生していた場合には、締め直したり新たなボルトに交換したりといった作業が必要です。
参考:https://jema-net.or.jp/Japanese/res/solar/pdf/191227_pv_maintenance.pdf
上記で紹介したメンテナンスは一例であり、実際の点検作業ではさまざまな項目を細かくチェックしていきます。
「亀裂や錆、腐食がないかを目視するくらいなら、自分でもできるのでは?」と感じる方もいるかもしれませんが、発電設備である以上、電気配線にむやみに触れてしまうと感電したり発電機器が故障したりといったトラブルに発展することもあります。
フェンスや柵の周辺にある雑草を刈ったり、ゴミなどを片付ける程度であれば問題ありませんが、設備そのもののメンテナンスとなると専門の資格をもった業者へ依頼するのがベストな方法といえるでしょう。
しかし、だからといってオーナー自身が太陽光発電設備のことを全く管理しなくて良いというわけではありません。
こまめに設備の周辺を見回り、異常がないか目を配っておくのも重要な点検のひとつです。
これによって、万が一設備に異常が見られた場合でも初期段階で的確にフォローすることができ、大きな事故やトラブルを未然に防止できるでしょう。
太陽光発電設備を安心して維持していくために、メンテナンスを専門業者へ依頼する場合、どの程度の費用がかかるものなのでしょうか。
まず、太陽光発電のメンテナンスを依頼するパターンとしては、導入時に施工した業者へ引き続きメンテナンスを依頼するケースと、施工業者とは異なるメンテナンス専門業者へ依頼するケースがあります。
施工業者へ依頼する場合には、導入時の契約内容によってもメンテナンスの頻度や費用は異なります。
一般的には年間で10万円程度、またはそれ以下で対応してくれる業者も多く、費用の相場としては安価です。
また、自社で施工しているため、設備の仕様も熟知しているため安心して任せられる点はメリットといえるでしょう。ただし、対応できるのは平日のみで、休日は営業時間外のため対応できない業者も少なくありません。
一方、メンテナンス専門業者の場合には、年間10万円以上の費用がかかる場合が多く、施工業者に比べるとコストは高めの傾向があります。
しかしその分、平日・休日に関係なく迅速に対応してくれるケースが多いほか、さまざまな規模の太陽光発電のメンテナンスを専門に請け負っているため、ノウハウが豊富で異常や不具合に気付きやすいことも心強いポイントといえます。
今回紹介したように、太陽光発電設備のメンテナンス項目は数多く存在し、ノウハウや知識がない人にとっては危険を伴う作業でもあります。
投資型太陽光発電の場合には年に2回以上のメンテナンスが義務付けられているため、信頼できる施工業者やメンテナンス専門業者を選び依頼するようにしましょう。