画像記事詳細detail

企業や工場における自家消費型太陽光発電は今後どうなる?

更新日:2021.12.28

SDGs・脱炭素

SDGs・脱炭素

太陽光発電を行う目的は大きく分けて2つ存在します。ひとつは、発電した電力を販売し売電収入を得ること、そしてもうひとつは、オフィスや工場・自宅などでオーナー自身が電力を使用することです。

現在、企業を中心に売電収入を得る目的ではなく、自家消費を目的として太陽光発電設備を導入するケースが増えています。今後、自家消費型太陽光発電はどう変わっていくのでしょうか。客観的な事実を分析しながら、今後予想される未来を詳しく解説していきます。

 

関連記事:太陽光発電の「FIP制度」とはどんな仕組み?FIT制度との違いも解説

 

太陽光発電のトレンドはFITから自家消費型へと移行

そもそも、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーが急速に普及した背景には、固定価格買取制度の存在があります。これは、年度ごとに定められた価格で電力を販売できるという制度で、FIT制度ともよばれます。

FIT制度のもとで再生可能エネルギーの全量買取がスタートした2012年、10kW未満の太陽光発電設備で発電された電力の買取価格は1kWあたり42円でした。しかし、その後2013年には38円、2014年には37円と徐々に下落していき、2020年度は2012年度の半分にあたる21円にまで下がっています。太陽光発電事業者にとっては、売電収入による利益が出しづらい環境となっており、FIT制度を前提としたビジネスは今後縮小傾向に向かうと予想されます。

しかし、それとは対照的に、売電収入を得ることを目的とするのではなく、自家消費を前提としたビジネスモデルが注目されるようになりました。実際に2017年度以降、自家消費型太陽光発電設備の導入が増加しているという統計データもあり、今後さらなる伸びが期待されています。

このように、従来はFIT制度のもとで売電収入を得るビジネスモデルが主流でしたが、現在は自家消費型へとトレンドが移行してきているのが実情といえるのです。

 

関連記事:自家消費型太陽光発電の蓄電池の必要性について

 

自家消費型太陽光発電の追い風となる6つの要因

FIT制度の買取価格が年々下落傾向にあることで、自家消費型太陽光発電へトレンドが移行していることが分かりました。しかし、それだけでは自家消費型太陽光発電が今後も持続的に成長していくと断言することは難しいでしょう。

自家消費型太陽光発電の普及に向けては、今後追い風となる要因も存在します。なかでも注目すべき6つの項目についてピックアップしてみます。

太陽光発電設備の設置コスト低下

従来、太陽光発電設備は決して一般に普及しているとはいえず、珍しいものでした。しかし、現在では国や自治体、民間企業をはじめとして、一般の住宅にも太陽光発電設備が設置されているケースは珍しくありません。

太陽光発電設備に限ったことではありませんが、需要が高い製品であればあるほど、世の中に広く普及する過程において開発コストや製造コストは下がっていくのが一般的です。太陽光発電設備も例外ではなく、資源エネルギー庁が発表した資料「太陽光発電について」によると、1kWあたりの設置費用は2017年度に24.4万円であったものが、2020年度には14.2万円にまで下落しています。

この背景には、太陽光パネルの量産体制が確立されたことや、技術革新によって太陽光パネルそのものの発電効率がアップしたことも挙げられます。

 

関連記事:CO2の排出権取引とは何か?日本で運営されているJ-クレジットも解説

 

省エネ法の改正

2021年12月、政府は国内企業約1万2,000社に対し、CO2を排出しないエネルギーの導入目標を策定することを義務付ける方針を固めました。対象となるのは、エネルギー使用量が原油換算で年間1,500kl以上の事業者で、2023年春から施行することを目指しています。

具体的には、太陽光や風力といった再生可能エネルギーや、その他CO2を排出しない代替エネルギーの導入目標を年に1回提出することを義務づけ、取り組みが不十分であると国が判断した場合には立入検査や指導を実施。罰金や罰則対象となることもあるとしています。

これまでCO2削減に向けて具体的な取り組みができていなかった、もしくは取り組みが不足していた企業にとっては、太陽光発電設備の導入は重要な選択肢のひとつになるでしょう。

 

 

環境配慮型経営に対する注目度アップ

持続可能な開発目標である「SDGs」は、ビジネス業界だけでなくテレビやラジオ、雑誌といったさまざまなメディアに取り上げられるようになり、一般社会に徐々に定着してきています。

そもそもSDGsとは、持続可能な社会を実現するために求められる17の目標から構成されており、そのなかには地球環境の保全に関する項目も含まれます。

一般社会にSDGsが認知されると、「この企業はSDGsに対してどのような取り組みをしているのか?」と興味や関心を抱く消費者や取引先も出てくるでしょう。SDGsに対して積極的な取り組みをしていると、自社の利益だけでなく社会貢献にも力を入れている企業であると認識され、企業の信頼性やイメージアップにもつながると期待できます。

SDGsで掲げられている目標のうち、「7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、「13.気候変動に具体的な対策を」の2項目は、再生可能エネルギーとも関連の深い内容です。

たとえば、自社の社屋や敷地内に太陽光発電設備があれば、それだけで環境配慮型経営に取り組んでいることが分かります。SDGsに関する象徴的な取り組みのひとつとして、太陽光発電設備の導入を検討する企業がますます増えてくると考えられます。

サプライチェーン排出量の影響

企業やメーカーが製品を市場に流通させ、消費者の手元に届けるまでには、部品製造を手掛ける下請け企業や物流企業まで、さまざまな企業の連携が欠かせません。このような一連の流れをサプライチェーンとよびますが、CO2排出量をトータルで削減するために、「サプライチェーン排出量」という考え方があります。

すなわち、製品を開発するメーカーだけでなく、その下請け企業に対しても環境配慮型の経営が求められるというもの。これにより、大企業だけでなく、中小企業のなかにも再生可能エネルギーを事業に活用する動きが活発化すると期待されます。

BCP対策

地震や台風が多い日本において、災害そのものをなくすことは難しいことから、減災という考え方が定着しつつあります。企業ができる具体的な取り組みとしては、災害が発生した際にも事業を継続していけるよう「BCP(事業継続計画)対策」を講じることです。

しかし、大規模な災害が発生したとき、長時間にわたって停電が起こると事業の運営に支障をきたすこともあるでしょう。そこで、太陽光発電設備を導入することにより、災害時にも事業運営に必要な最低限の電力を確保できます。

環境に配慮したエネルギーを確保すると同時に、BCP対策によって事業を存続させていくためにも、太陽光発電設備の需要は今後さらに伸びていくと予想されます。

 

関連記事:企業の脱炭素化に向けた取り組みや太陽光発電事業

 

設備導入形態の多様化

従来、太陽光発電設備を導入するためには、必要な機器や設備を購入する方法が一般的でした。しかし、大規模な太陽光発電設備となると、数百万円、数千万円といった単位のコストがかかるのが一般的です。資金力に余裕のない企業にとっては、導入したくてもできないといった悩みがありました。

しかし、近年では自社で設備を保有するのではなく、第三者所有モデルという方法も確立されつつあります。別名「PPAモデル」ともよばれ、自社の屋根や屋上、敷地をPPA事業者へ貸し出し、PPA事業者が太陽光発電設備を設置し運用するというものです。

屋根や敷地を貸し出す企業は一切の設備費用の負担がなく、PPA事業者が発電した電力を契約にもとづき料金を支払って利用することもできます。

コスト面で課題を抱えていた企業にとっても、PPAモデルは有効な解決策となるため、中小企業も含めて太陽光発電設備の需要が増加すると考えられます。

 

 

自家消費型太陽光発電の市場は拡大する可能性が高い

今回紹介してきたように、FIT制度の買取価格が年々下落傾向にあり、今後もこの流れは続いていくと予想されます。太陽光発電に乗り出す事業者が増え、供給量が増加したことがひとつの要因といえるでしょう。

一方で、参入事業者が増えたことで機器や設備の設置コストが下がり、自家消費型太陽光発電の導入ハードルは低下しています。さらに、PPAモデルなど設備導入形態が多様化していることもあり、自家消費型太陽光発電の市場は今後さらに伸びていくと予想されます。