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太陽光投資を成功させるうえで欠かせないのが、物件購入前の収支シミュレーションです。
収支シミュレーションは物件紹介ページでもされていますが、これはあくまで物件紹介サイトが出したものであり、やや楽観的な数値になっている感も否めません。
損を防ぐためには、自分でも収支シミュレーションをしておくのがおすすめです。この記事では、自分でできる、太陽光投資の収支シミュレーションの方法について、説明していきます。
関連記事:法人の太陽光発電はどのように節税できる?太陽光節税方法を詳しく解説します!
目次
太陽光投資では、2020年度から、10kW以上50kW未満の「低圧」の物件では、「自家消費比率30%以上」が認定の要件に加わりました。2020年度以降にFIT認定を受ける場合、全量売電ができず、売電収入が少なくなってしまいます。
しかし、2019年度以前に認定を受けている物件を購入する場合は、この限りではなく、全量売電が可能です。そのため、これから太陽光投資を始めるなら、こうした物件を購入するようにしましょう。本記事でも、この条件で、全量売電することを前提に進めていきます。
太陽光投資で得られる収入は、「発電量×FIT単価」で求められます。このうち、年間の予想発電量は、以下の計算式で算出可能です。
「1日あたりの年平均日射量×損失係数×システム容量×365日=年間予想発電量」
発電量を求めるうえでは、まず「日射量」のシミュレーションを行いましょう。
日射量とは、太陽が放射するエネルギー量を測定したものです。日射量は、国立研究開発法人「NEDO」の「日射量データベース閲覧システム」で確認できます。このシステムは、NEDOの「日射に関するデータベース」から、パソコンにダウンロード可能です。
画像出典:NEDO「日射量データベース閲覧システム」
システムをダウンロードしたら、中央の「年間月別日射量データベース(MONSOLA-11)」をクリックしましょう。
画像出典:NEDO「日射量データベース閲覧システム」
次に、日射量をチェックしたい「エリア」と「地点」を選んで「この地点のグラフを表示」のボタンをクリックします。
画像出典:NEDO「日射量データベース閲覧システム」
次の画面で、「角度指定」「任意の指定」にチェックを入れ、「傾斜角」と「方位角」を指定すると、1日あたりの年平均日射量が表示されます。
このケースでの年平均日射量は、「3.92kWh/㎡」です。
日射量が分かれば、以下の計算式に当てはめて、年間発電量が計算できます。
「1日あたりの年平均日射量×損失係数×システム容量×365日=年間予想発電量」
「損失係数」とは、太陽光発電を行ううえで生じる発電ロスを、日射量から差し引くための指標です。NEDOの資料では、損失係数は「約73%」となっています。
では、以下のケースで、年間発電量を計算してみましょう。
この場合の年間予想発電量は、47001.78kWhとなります。
年間発電量に、FIT単価を掛けた数値が、年間の売電収入額。
年間の売電収入額に、FIT期間の20年を掛けた数値が、トータルでの売電収入額になります。
収入額がシミュレーションできたら、次に支出額をシミュレーションしましょう。
太陽光投資では、設備の購入時に初期費用がかかるほか、主に以下の経費もかかります。
ここでは、初期費用と、上記の経費のシミュレーション方法について、説明していきます。
太陽光投資にかかる、主な初期費用は、以下のとおりです。
物件によって、上記の費用がすべて販売価格に含まれているものもあれば、一部別料金となっているものもあるので、確認しておきましょう。
太陽光発電設備には毎年、固定資産税の一種である「償却資産税」がかかります。
償却資産税額は「課税標準額(償却資産の評価額)×1.4%」で計算しますが、設備の評価額は年々減っていくため、課税標準額も毎年、減少していきます。
各年の課税標準額を計算するうえで使用するのが、「法定耐用年数」に応じた「減価残存率」です。
画像出典:東京都主税局「減価残存率表」
太陽光発電設備の法定耐用年数は「17年」と定められているので、それぞれ以下の数値を使って計算します。
太陽光発電設備の価格に「0.936」を掛けた金額が、設備を購入した年の課税標準額になります。
この課税標準額に、1.4%を掛けた金額が、1年目の償却資産税額です。
2年目は、1年目の課税標準額に「0.837」を掛けた金額が、その年の課税標準額。
これに1.4%を掛けた金額が、2年目の償却資産税額になります。
例えば、太陽光発電設備の価格が2,000万円の場合、各年の課税標準額、および償却資産税額は、以下のようになります。
課税標準額 | 償却資産税額 | |
1年目 | 18,720,000円 | 262,000円 |
2年目 | 15,668,000円 | 219,300円 |
3年目 | 13,114,000円 | 183,500円 |
※課税標準額は1,000円未満切り捨て、償却資産税額は100円未満切り捨て
あとは各年とも、前年の課税標準額に0.837と1.4%を掛けることで、各年の課税標準額と償却資産税額が計算できます。
法定耐用年数の17年目までの合計額が、太陽光発電設備にかかる償却資産税の総額です。
太陽光発電設備の購入にあたって、融資を利用する場合は、毎月のローンの返済額もかかります。
ローンの返済額を計算するうえでは、ネット上にある「ローン計算シミュレーションツール」が便利です。
こうしたツールで、以下の条件を入力すれば、毎月の返済額が分かります。
多くの場合、返済総額も、計算結果に一緒に表示されます。
損害保険料は、加入を検討している保険の年間保険料がいくらになるか調べておきましょう。保険料の年額に、20年を掛けた金額が、太陽光投資にかかる保険料の総額です。
メンテナンスを外注する場合は、業者をいくつかピックアップしたうえで、費用がどれくらいかかるか問い合わせましょう。月額なら240カ月、年額なら20年を掛けた金額が、太陽光投資にかかるメンテナンス費用の総額です。
収支シミュレーションの方法について、解説してきました。支出については、土地の固定資産税やパワコンの交換費用もかかりますが、太陽光投資を始める前の段階で、これらを算出するのは困難です。
そのため、この記事で紹介した方法で収支シミュレーションを行う場合は、これらの費用が差し引かれることも考慮したうえで、利益額が十分になるような物件を購入することをおすすめします。
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