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農地をあげることはできる?譲渡方法や注意点を解説

更新日:2024.07.27

節税

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農業従事者の減少や高齢化などにより、使用しなくなった農地が増えています。

使用していないからといって農地を放置しておくと、雑草が増え近隣にさまざまな被害を及ぼしたり、固定資産税が重くのしかかってくることもあります。

そこで、第三者に対して農地をあげたいと考えている方のために、譲渡方法や譲渡の際の注意点などを詳しく解説します。

農地をあげる(譲渡する)ことは可能なのか?

結論からいえば、農地を第三者にあげる(譲渡する)ことは可能ですが、その他の土地とは異なり特別な許可が必要です。

そもそも、土地は用途に応じてさまざまな種類(地目)があります。

たとえば、住宅や店舗、工場などを建設するための土地は「宅地」ですが、駐車場や資材置き場などに使用する土地は「雑種地」として登記する必要があります。

農地とは主に「田」や「畑」として登記される土地の総称であり、農地法では「耕作の目的に供される土地」と定義されています。

農業人口の減少や農業従事者の高齢化などが進む昨今、休耕地が増え農地の管理が難しくなるケースも珍しくありません。

そのような場合に、農地を第三者にあげたい、譲り渡したいと考えるのは自然なことです。

しかし、農地は食料自給率とも密接に関係してくることから、各市町村に設置されている「農業委員会」へ届け出をし、個別に許可を得る必要があります。

ちなみに、農地をあげる際には、農地のままの状態で譲渡するパターンと、宅地や雑種地などに転用して譲渡する2パターンに分けられます。

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農地をあげる方法は?

農地をあげる際には、具体的にどのような方法があるのでしょうか。代表的な3つの例をご紹介します。

近隣の農家へ譲渡

もっともシンプルなやり方としては、近隣の農家に無償で譲渡する方法があります。

作付面積の拡大を検討していたり、これから新たに農業へ参入したいと考えている人にとって農地の確保は重要な課題です。

また、日当たりや土壌などに問題があり、より好条件の農地を探している農家が近隣にいる場合にはスムーズに話が進められるでしょう。

ネットで貰い手を探す

農業人口の減少に伴い、近隣に農家がおらず譲渡先が見つからないというケースも多いでしょう。

そのような場合にはインターネットを駆使しながら農地の貰い手を探す方法もあります。

SNSで探すのもひとつの手ではありますが、近年では農地をはじめとした不動産の譲渡先を見つけられる専用の掲示板やサイトも登場しています。

ただし、これらの中には当事者同士がやり取りや交渉を行わなければならないサービスも多いことから、トラブルに巻き込まれないよう細心の注意を払う必要があります。

相続土地国庫帰属制度

空き家や空き地などが増加し大きな社会問題になったことから、政府は2021年度から「相続土地国庫帰属制度」を開始しました。

これは親や親族から相続した土地を手放したいときに、国有地として返還する制度です。

農地は適切な管理をすることなく放置しておくと、雑草や害虫などが発生し近隣への迷惑になることもあります。

相続土地国庫帰属制度を利用して国に管理してもらうことで、このような苦情に頭を悩ませる心配もなくなります。

ただし、相続土地国庫帰属制度を利用するためには管理費を納付しなければならず、経済的負担が大きなネックとなります。

 

農地をあげる際にやること

農地の貰い手が現れた場合、どのような準備や手続きが必要となるのでしょうか。

農地区分の確認

農地とは「田」や「畑」として登記される土地とご紹介しましたが、農地法ではさらに細かく農地区分が定められています。

農地を農地として譲渡または売却する場合は基本的に問題ありませんが、宅地や雑種地のように農地以外に転用する場合には注意が必要です。

以下の表にあるように、農地転用の許可が下りやすい区分もあれば原則不許可とされている区分もあります。

農地区分農地の位置・条件等転用許可方針
農振農用地区域内農地市町村が定める農業振興地域整備計画での農振農用地区域とされた農地原則不許可

※転用は原則として農振農用地から外す手続きが必要

甲種農地およそ10ヘクタール以上で、高性能な農業機械による営農に適している大規模農地

農業公共投資(土地改良事業等)から8年以内の農地

原則不許可

※例外許可あり

第1種農地およそ10ヘクタール以上で高い生産力が認められる大規模農地

農業公共投資(土地改良事業等)対象の農地

原則不許可

※例外許可あり

第2種農地10ヘクタール未満の小規模農地

駅、市町村役場等の公共施設から500メートル以内にある農地

一部許可
第3種農地駅、市町村役場等の公共施設から300メートル以内にある農地

都市計画法上の用途地域が定められている区域内にある農地

上下水道管、ガス管のうち2つ以上が埋設された道路区域で、500メートル以内に2つ以上の教育施設、医療施設等の公共公益施設がある農地

原則許可

農業委員会への手続き

冒頭でもご紹介した通り、農地の譲渡や売却、転用を行う際には、必ず各市町村に設置されている「農業委員会」へ届け出をし、個別に許可を得なければなりません。

これは農地法によって定められており、届け出をしないまま無許可で農地を譲渡したり売却したりした場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が課される可能性もあります。

また、すでに工事に着手していたり、工事が完了している場合には、農地に戻すための工事も自己負担となり多額の費用がかかってしまうため注意しましょう。

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農地を放置するリスク

手続きが面倒だからといって農地を長期間にわたって放置しておくと、さまざまなリスクや被害が及ぶ可能性があります。

固定資産税がかかる

一戸建てやマンションなどを購入すると固定資産税が発生しますが、これは農地も同様です。

農地が放置されると、その土地の生産性や利用価値が低下し、収益を生むことが難しくなりますが、そのような状況であっても農地を所有している限り固定資産税は毎年納付しなければなりません。

収入が得られない土地に対して税金を支払い続けることは、所有者にとって大きな経済的負担となります。

近隣への被害

放置された農地は雑草や害虫の温床となりやすく、周辺の農地や住宅地に悪影響を及ぼす可能性があります。

特に春から秋にかけては雑草の成長スピードは早く、草刈りなどを定期的に行っていないと雑草が近隣の農地まで広がっていきます。

また、放置された土地は不法投棄の場所としても狙われやすく、地域の景観や環境を損なう原因にもなるでしょう。このような状況が続くと、近隣住民との関係も悪化するおそれがあります。

子や孫への負担

農地の管理・維持には多くの手間と費用がかかるため、放置された農地を相続するということは子や孫に対しても大きな負担を強いることになります。

また、相続した土地に対しては毎年固定資産税の支払いが続くため、メリットよりもデメリットのほうが大きいといえるでしょう。

仮に、将来農地の処分や売却を検討する場合であっても、放置されていた期間が長いほど農地の価値は低下しやすく、売却が難しくなることがあります。

 

農地はあげるのではなく売却することも検討しよう

農地は第三者に対して無償であげるのではなく、売却することも選択肢として検討してみましょう。売却にはいくつかの方法があります。

農家への売却

もっとも理想的な方法といえるのは、他の農家に売却することです。

現役の農家はすでに農業の知識や経験を持っており、農地を適切に管理し利用する能力があります。

また、近隣の農家に売却することで、地域の農業発展に貢献できたり、良好なコミュニティを構築・維持していくことにもつながるでしょう。

また、何よりも農地の利用が継続されることにより地域全体の農業環境が守られ、雑草や害虫発生のリスクも軽減できます。

仲介業者へ依頼

農地の売却をスムーズに進めるためには仲介業者に依頼することも有効です。

特に市街地に近い場所に立地している農地の場合、農地以外にも宅地や雑種地としての利用価値が期待できる場合があります。

そこで、土地の売買を扱う不動産仲介業者へ依頼することで、農家以外の売却先が見つけられる可能性もあるでしょう。

もちろん、農地転用に関する手続きや契約に関しても仲介業者がサポートしてくれるため、円滑に売却手続きを進められます。

専門買い取り業者へ売却

農地専門の買い取り業者に売却することも有力な方法といえます。専門業者は農地の市場価値を正確に評価したうえで、適正な価格で買い取ってくれます。

また、農家へ売却する際には農業委員会への届け出や登記移転の手続きなどを当事者で行わなければならないほか、仲介業者へ売却を依頼する際においては購入希望者が現れないと売却が進まないケースもあります。

しかし、農地専門の買取業者であれば売却に関する手続きにも精通しているため安心して任せられるほか、買い手が見つからない場合でも業者が買い取ってくれます。

そのため、特に急ぎで農地を売却したい場合や、複雑な手続きを避けたい場合に有効な方法といえるでしょう。

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まとめ

農地を放置しておくと雑草や害虫が増え近隣の田畑や住宅へ被害をおよぼす可能性もあることから、適切な管理が求められます。

また、使用していない農地であっても固定資産税は支払わなければならないため、このような負担を軽減するためにも農地の譲渡は有効な方法といえるでしょう。

しかし、第三者に農地をあげたいと考えても、譲渡先が見つからなかったり手続き方法が分からなかったりとさまざまな問題に頭を悩ませることもあります。

そのような場合には、農地専門の買い取り業者へ相談してみることで解決につながるかもしれません。

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