SDGs・脱炭素
企業や団体が事業用として自家消費型太陽光発電を導入する場合、負担しなければならないコストが大きく、導入を躊躇してしまう企業も少なくありません。
しかし、SDGsというキーワードが注目されている中、環境への配慮は企業が取り組むべき重要な経営課題でもあります。国としてもCO2の排出削減に向けて企業や団体へさまざまな取り組みを求めており、そのための具体的支援として補助金事業を行っています。
補助金を活用することで、導入コストが高額になりがちな自家消費型太陽光発電も比較的安価に運用でき、ランニングコストの低減にも大いに貢献してくれるはずです。
そこで今回は、環境省が主導で行っている太陽光発電に関する企業や団体向けの補助金事業をいくつか紹介します。
目次
「PPA活用など再エネ価格低減等を通じた地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業」は、環境省が主導で行っている補助金事業です。
全国の民間企業および自治体、団体などを対象としており、地域において再生可能エネルギーを主力化するとともに、レジリエンスの強化を目的として実施されています。
全部で6つの事業内容に分けられますが、今回はその中から太陽光発電と関連が深い2つの事業について詳しく紹介します。
「ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業」は、蓄電池の損益分岐点であるストレージパリティを達成させるために、太陽光発電設備と蓄電池を併用しながら、最終的にはレジリエンスの向上を目的としています。
PPAにおける発電事業者に対して補助金を出すことで、エンドユーザーである企業や団体などに対して安価な電気料金を提供する間接補助事業となっています。
対象設備 | 太陽光発電設備 蓄電池 |
補助金額 | 太陽光発電設備:定額4~5万円/kW+設置工事費相当額定額(10 万円) 蓄電池:2万円/kWhまたは6万円/kW+設置工事費相当額定額(10 万円) |
補助対象事業者 | 民間企業 |
実施期間 | 令和3年度~令和6年度 |
「再エネの価格低減に向けた新手法による再エネ導入事業」は、安価な太陽光発電設備の普及を促進するために、従来のような屋根上や空き地などへの設置ではなく、カーポート等を活用した需給一体型の太陽光発電設備の開発を促進する補助金事業です。
こちらも再生可能エネルギーを普及させるために、発電設備の開発を担う事業者に対して補助金が支給される間接補助事業となっています。
対象設備 | 建物屋根上や空き地以外の場所(カーポート等)を活用した需給一体型の太陽光発電設備 |
補助金額 | 補助対象経費の3分の1(補助金交付額の上限は1億5千万円) |
補助対象事業者 | 地方公共団体 民間企業 |
実施期間 | 令和3年度~令和6年度 |
「地域レジリエンス・脱炭素化を同時実現する避難施設等への自立・分散型エネルギー設備等導入推進事業」は、避難所や防災拠点へ再生可能エネルギーの導入を促進し、レジリエンスを強化することを目的とした補助金事業です。平時には再生可能エネルギーを恒常的に活用し、CO2排出削減にも貢献します。
対象設備 | 1.再生可能エネルギー設備・未利用エネルギー活用設備・コジェネレーションシステム 2.蓄電池設備(据置(定置)型) 3. 省エネルギー設備(1の設備と合わせて導入する場合に限る) |
補助金額 | 1.都道府県:3分の1 市町村:2分の1(離島の場合は3分の2) 2.2分の1(上限500万円) |
補助対象事業者 | 避難施設、防災拠点等に指定されている地方公共団体および民間企業 |
実施期間 | 令和3年度~令和7年度 |
「廃熱・未利用熱・営農地等の効率的活用による脱炭素化推進事業」は、農業を営む個人および団体などを対象とし、農業に関連する施設や設備への電力供給におけるCO2削減を推進するための補助金事業です。また、地域特性に応じた発電システムを構築し、地域内での効率的なエネルギーの連携も目的としています。
補助対象となる事業者は、あくまでも農業に従事している農業者または農業団体などに限られるほか、原則として売電ではなく農業への電力活用のみが補助金の対象事業となります。ただし、例外として当該地域内の農林水産施設や自治体への売電は認められます。
対象設備 | 農業に利用する太陽光発電 風力発電 蓄電池など |
補助金額 | 2分の1(上限3億円) |
補助対象事業者 | 農業者 農業団体など |
実施期間 | 平成29年度~令和3年度 |
「工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業」は、工場およびその他事業場において燃料の転換や設備の更新、運用改善などを行い、CO2削減を推進するための補助金事業です。すでに脱炭素化に向けて取り組んでいる企業を支援するとともに、補助金によって新たに脱炭素化への取り組みをスタートさせる企業を拡大する狙いもあります。
対象設備 | 1.脱炭素化促進計画の策定支援 2.設備更新に対する補助 |
補助金額 | 1.脱炭素化促進計画の策定支援:2分の1(上限100万円) 2.設備更新に対する補助:3分の1 a. 「脱炭素化促進計画」に基づく設備更新の補助 (補助上限1億円) b.以下を満たす「脱炭素化促進計画」に基づく設備更新の補助 (補助上限5億円) i)ガス化または電化等の燃料転換 ii)CO2排出量を4,000t-CO2/年以上削減 iii)システム系統でCO2排出量を30%削減 |
補助対象事業者 | 民間企業 |
実施期間 | 令和3年度~令和7年度 |
「再エネの最大限の導入の計画づくり及び地域人材の育成を通じた持続可能でレジリエントな地域社会実現支援事業」は大きく分けて3つの事業がありますが、太陽光発電との関連性が高い事業としては「地域再エネ導入を計画的・段階的に進める戦略策定支援」があります。
これは、各自治体における再生可能エネルギーの導入を促進するために、具体的な目標の策定および導入計画を立て合意形成を図ることを目的とした補助金事業です。
対象は地方公共団体に限られ、補助金額は自治体の規模に応じて異なります。
対象設備 | 1.2050年を見据えた地域再エネ導入目標策定支援 2.円滑な再エネ導入のための促進エリア設定等に向けたゾーニング等の合意形成支援 |
補助金額 | 小規模自治体:定額(上限1,000~3,500万円) 都道府県・指定都市・中核市・特例市:4分の3 |
補助対象事業者 | 地方公共団体 |
実施期間 | 令和3年度~令和5年度 |
「建築物等の脱炭素化・レジリエンス強化促進事業」は、民間事業者や地方公共団体の建築物のZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)化を目指すための補助金事業です。ZEBとは、自社の建物で使用する一次エネルギーの収支をゼロにすることを指します。これは省エネによってエネルギー使用量を減らすことはもちろんですが、太陽光発電などによってエネルギーを自前で調達する取り組みも含まれます。
事業内容は大きく分けて6つに分類されますが、太陽光発電と関連性がある事業としては「レジリエンス強化型ZEB実証事業」「ZEB実現に向けた先進的省エネルギー建築物実証事業」「上下水道・ダム施設の省CO2改修支援事業」があります。
「レジリエンス強化型ZEB実証事業」では、災害時にも電力供給が可能な施設の建築および改修を支援し、ZEB化とレジリエンスの両立を目指します。
対象設備 | 災害時の拠点となる施設のレジリエンス強化およびZEB化 被災等による建て替えや改修は優先的に採択 |
補助金額 | 『ZEB』:補助対象経費の2/3
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補助対象事業者 | 民間企業 地方公共団体 |
実施期間 | 令和2年度~令和5年度 |
「ZEB実現に向けた先進的省エネルギー建築物実証事業」は、民間企業および地方公共団体まで広くZEB化を実現するため、設備機器の導入に対して支援する補助金事業です。
民間企業から地方公共団体まで幅広く対象に含まれるほか、建物を新築する場合はもちろん、既存施設の改修なども対象となります。
補助金額の割合は、建物の面積や新築・改修によっても変動します。
対象設備 | 新築:10,000平米未満の民間建築物 改修など:2,000平米未満の既存民間建築物 地方公共団体の建築物(面積上限なし) |
補助金額 | 『ZEB』:補助対象経費の3/5
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補助対象事業者 | 民間企業 地方公共団体 |
実施期間 | 平成31年度~令和5年度 |
「上下水道・ダム施設の省CO2改修支援事業」は、上下水道やダムなどにおける施設で使用する電力を省力化するとともに、当該施設への再生可能エネルギーの設備導入を目的として行われる補助金事業です。
対象設備 | 上下水道、ダム施設における発電設備の導入および改修 |
補助金額 | 2分の1または3分の1 |
補助対象事業者 | 民間企業 地方公共団体 |
実施期間 | 平成28年度~令和5年度 |
企業や団体が自家消費型太陽光発電の設備を導入する場合、活用できる補助金制度はさまざまなものがあり、ルールも複雑で分かりづらいと感じた方も多いのではないでしょうか。
今回は環境省が主導する補助金制度を紹介してきましたが、これ以外にも地方自治体が主導して提供している補助金制度も存在します。
「自社が現在進めている太陽光発電の導入計画は、補助金制度の対象となるのか」または「補助金を有効的に活用するために、さらに最適なプランは組み直せないか」といった疑問を感じる方も多いはず。
そのような場合には、まず専門の業者へ相談し自社に最適なプランを検討してみましょう。