節税
家族や親族から土地を相続するケースは少なくありませんが、全ての土地に対して資産価値があるとは限りません。
中でも山林は急斜面に位置しているところもあり、土地の売却を検討したものの買い取りを断られてしまうケースもあります。
そこで有効な選択肢となるのが山林引き取りサービスです。本記事では山林引き取りサービスの概要やメリット、その他の処分方法も含めて詳しく解説します。
目次
山林引き取りサービスとは、その名の通り所有している不要な山林などの土地を無償で引き取ってもらえるサービスです。
引き取られた山林などの土地は、以下のようにさまざまな目的に活用されます。
サービス提供事業者によっても条件はさまざまですが、多くの場合は山林以外の土地も引き取ることができます。
ただし、農地の場合は他の地目に変更(農地転用)が可能であるか、その他さまざまな条件をクリアした場合にのみ引き取りが可能であるケースが多いです。
山林引き取りサービスを活用することで、土地の所有者にとってはどのようなメリットがあるのでしょうか。
親や祖父などから土地を相続した場合、土地の評価額によっては多額の相続税が発生するケースもあります。
相続放棄という手段もありますが、この場合は土地以外の財産も放棄しなければならず、難しい選択を強いられることもあるでしょう。
また、土地があるにもかかわらず、有効に利用できていないと毎年固定資産税ばかりを支払うことになり、相続した後も経済的な負担を強いられます。
山林引き取りサービスを活用し不要な土地を引き取ってもらうことで、相続税や固定資産税などを節約でき、経済的な負担を軽減できる可能性があります。
土地を所有する以上は適切な管理が求められ、これを怠ってしまうと近隣住民や農地などにさまざまな被害を及ぼす可能性があります。
山林引き取りサービスを活用すれば管理の手間から解放され、トラブルに見舞われる心配もなくなるでしょう。
不要な土地を処分するためには、山林引き取りサービス以外にもさまざまな方法が考えられます。代表的な処分方法を4つご紹介しましょう。
立地条件などが良く資産価値が期待される土地であれば、不動産会社に買い取ってもらえる可能性があります。
土地の取引にあたっては法的な専門知識が必要であり、手間のかかる事務手続きも多いですが、不動産会社に依頼することでこのような問題を解消できます。
ただし、土地そのものに資産価値がない場合には買い取りを断られたり、不動産仲介という形で売却を依頼する場合には買い手がすぐに見つからない可能性もあります。
不動産会社に買い取りを断られた場合には、森林組合に相談してみるのもひとつの手といえます。
森林組合とは私有林を保有する個人や林業を営む事業者を中心に組織された組合のことで、全国に600以上存在します。
森林組合に相談することで、組合員に情報提供し山林を引き取ってもらえる人を探すことができます。
ただし、森林組合はあくまでも組合員に情報提供をするのみであり、すべての山林を確実に引き取ってもらえるとは限りません。
山林をはじめとした土地は自治体に寄付できる場合もあります。
自治体への寄付は確定申告の際に寄付控除の対象となるため節税対策にも有効で、処分にかかる費用も節約できます。
ただし、山林の寄付を受け付けている自治体はごく少数に限られているほか、資産価値がないと判断されたり、不法投棄などによる土壌汚染が確認されると引き取ってもらえない可能性もあります。
まずはお住まいの自治体に山林の寄付が可能であるか、条件なども含めて確認してみましょう。
相続土地国庫帰属制度とは、相続によって取得した土地を国に引き取ってもらう制度です。
日本では少子高齢化や地方の人口減少に歯止めがかからず、空き家が急増しています。
これを解決するために、2023年から始まったのが相続土地国庫帰属制度です。
住宅地や農地などはもちろん、山林も対象に含まれますが、急傾斜の山林などは相続土地国庫帰属制度であっても引き取りが拒否される可能性があります。
また、この制度を利用するためには申請および審査時に手数料が発生するほか、複数の所有者がいる山林の場合は全員で申請する必要があります。
相続土地国庫帰属制度について詳しい説明を聞きたい、あるいは条件などを確認したい場合には、お近くの法務局へ相談してみましょう。
家族や親族から遺産として山林を相続するタイミングで、もし不要であると判断した場合には相続放棄という手段もあります。
その名の通り遺産相続を放棄するため、不要な土地は手放すことができ相続税や固定資産税といった税金の支払い義務もなくなります。
ただし、相続放棄ができるのは「相続の開始を知ったときから3か月以内」と定められており、それ以外のタイミングで相続放棄はできません。
また、山林以外の土地や建物、株式、預金などの資産があった場合、それらも含めて相続放棄することになるため、慎重な判断が求められます。
適切な管理を怠り山林を放置したままにしておくとさまざまなトラブルを招き、場合によっては損害賠償などを請求される可能性もあります。
具体的にどういったリスクが考えられるのでしょうか。
秋から冬にかけて空気が乾燥した季節になると、山火事が発生しやすくなります。
たとえば、立入禁止の措置を講じることなく対策を怠った結果、登山客などが侵入し山火事が引き起こされるケースも考えられるでしょう。
特に大規模な山火事ともなると、付近の建物に延焼したり、近隣住民に避難勧告が出されることもあります。
台風や豪雨などの災害が頻発している昨今では、所有している山林で土砂崩れが引き起こされる危険性もあります。
住宅地に近い場所に山林があり、所有者の過失によって土砂崩れが発生し家屋に被害が及んだ場合には、損害賠償が請求される可能性もあるでしょう。
山林に関するトラブルで特に多いのが不法投棄の被害です。
たとえば、化学物質を含む産業廃棄物が山林に投棄され、近隣住民などから土壌汚染や水質汚染の被害が訴えられた場合には、不法投棄を行った人や業者が対応します。
しかし、実際には不法投棄を行った犯人が見つからないケースも多く、そのような場合には土地の所有者が処理を行わなくてはなりません。
当然のことながら不法投棄の量が多いほど撤去費用も高額になります。
近年増えているのがシカやイノシシ、クマなどの野生動物による被害です。
自身が所有する山林で適切な管理を怠り、それが原因で野生動物が農作物を食い荒らしたり、人に被害を及ぼしたとなると大きな問題に発展する可能性もあります。
そのため、使用していない土地であったとしても害虫や害獣対策は必須といえるのです。
「家族や親族から引き継いだ土地を処分するのは気が引ける」と感じる方や、「将来何かに活用できないか」と考えている方も多いのではないでしょうか。
しかし、山林を所有するということは適切な管理が求められ、それを怠ってしまうと土砂崩れや不法投棄などさまざまなトラブルに発展するリスクも秘めています。
不要な山林を保有し続けることは、メリットよりもデメリットのほうが大きいケースがほとんどであるため、放置したままになっている山林がある場合には早めに処分を検討することがおすすめです。
関連記事:企業や工場における自家消費型太陽光発電は今後どうなる?
不要な山林を売却するために不動産業者へ相談したものの、買い取りを断られてしまったという方にとって、山林引き取りサービスの活用は有効な手段といえます。
山林をそのまま放置しておくと固定資産税の負担も大きいほか、山火事や土砂崩れなどを引き起こすリスクもあります。
適切な管理が難しいと感じる場合には、まずは山林引き取りサービスを提供している専門業者に相談してみましょう。
gd2md-html: xyzzy Fri Jul 26 2024