SDGs・脱炭素
自社で消費する電力を自前で賄うことで、ランニングコストの節約が可能な自家消費型太陽光発電。かつて太陽光発電といえば、発電した電力を買い取ってもらうFIT(固定価格買取制度)が定番でしたが、近年では買取価格の下落にともない自家消費型を選択するオーナーが増加しています。
しかし、初めて太陽光発電設備を導入するオーナーのなかには、さまざまなリスクを十分検討しないまま進めてしまい後悔するケースも後を絶ちません。そこで今回は、自家消費型太陽光発電の導入にあたってありがちな失敗例と、後悔しないためにどのような対策を立てておくべきなのかを詳しく解説しましょう。
目次
自家消費型太陽光発電の導入にあたっては、十分な準備を怠ってしまうとさまざまなトラブルに見舞われることがあります。今回は、典型的な失敗例を5つ紹介しましょう。
屋外への設置が大前提となる太陽光発電設備は、つねに自然災害によるリスクと隣合わせの存在といえます。たとえば、強風によってパネルが吹き飛ばされたり、落雷によって設備そのものがダメージを受け、発電できなくなってしまうリスクもあるでしょう。また、豪雪地帯などに太陽光発電設備を設置すると、雪がパネルの上に降り積もり発電効率が大幅に低下する懸念も生じます。
さらに、山の斜面や地盤の弱い場所に太陽光発電設備を設置してしまうと、土砂崩れによって設備が全壊するリスクもあります。
太陽光発電によって十分な発電量を確保するためには、できるだけ太陽光が差し込む場所を選ぶ必要があります。
しかし、たとえばビルの屋上や屋根の上、空き地などに設置する場合、設置時は日当たりが良い場所であったとしても時間の経過とともに高いビルや建物が建設され、環境が変化するリスクもあります。また、周辺に建物がない場所であったとしても、樹木や雑草などが成長し太陽光を遮ってしまうことも考えられるでしょう。
太陽光発電によって得られる発電量は、設備の規模に比例します。たとえば、一般住宅の屋根に設置するような小規模な設備と、工場の屋根に設置する大規模な設備とでは明らかに発電量が異なるため、用途に応じた規模の設備を導入する必要があります。
しかし、そもそも自社ではどの程度の電力が必要なのかを把握しないまま狭いスペースや空き地に設置してしまうと、事業に必要な電力を賄いきれず、不足した電力を電力会社から購入しなければなりません。また、必要な電力量は把握できているものの、設置場所に応じた発電量のシミュレーションが不十分なケースもあります。
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太陽光発電設備の導入後に生じるトラブルとして意外と多いのが、太陽光パネルからの反射光による苦情です。太陽光パネルの表面はガラス素材のため、光を反射しやすい特性があります。そのため、日光の入射角によっては周辺の住宅へ強烈な反射光が届く場合もあり、住民から苦情を受けるといった事例が少なくありません。
また、大規模な太陽光発電設備を設置してしまうと周囲の景観を損ね、住民とのトラブルに発展する可能性もあるでしょう。
再生可能エネルギーの需要増加に伴い、太陽光発電設備の施工を手掛ける事業者も増えています。しかし、たとえば屋根や屋上へ設置する場合、適切な施工をしないと雨漏りの原因になることも少なくありません。
また、架台へ設置する際においても、十分な強度が確保できないと強風で飛ばされ、周辺住民や家屋などへ深刻な被害を及ぼす可能性もあるでしょう。
太陽光発電設備の施工実績が十分ないにもかかわらず、不適切な施工を請け負う悪質な事業者も存在することから、信頼できる事業者を慎重に選ぶ必要があります。
太陽光発電設備の規模によっても設置費用の相場は異なりますが、なかには極端に安価な費用で請け負っている事業者も存在します。しかし、施工方法や契約内容を十分に確認しないまま依頼してしまうと、上記で挙げたような失敗やトラブルの原因につながることもあります。
できるだけ費用を抑えたいと考えるのは当然のことではありますが、施工不良やトラブルを認識しているにもかかわらず、そのまま放置しておくと重大な事態へ発展する可能性があります。
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設置した太陽光発電設備に十分な強度がないと、強風などでパネルが飛散し、歩行者や家屋、自動車などに対して被害を及ぼす危険があります。特に多くの住宅が立ち並ぶ場所に太陽光発電設備を設置する際には、屋根や屋上からパネルが落下しないよう十分な安全対策を講じておかなければなりません。
万が一、設備の一部が飛散し物的被害や人的被害を及ぼした場合、オーナーに対して損害賠償請求が行われるリスクもあります。
屋根や屋上への施工に不備があると雨漏りの原因につながることを紹介しましたが、長期間にわたってこれを放置しておくと、建物の柱や壁などの構造物の劣化を引き起こす可能性があります。雨漏りの原因となっている穴を塞げば良いというわけではなく、建物の内部まで点検し補修をしなければなりません。たとえば、屋根の葺き替えや柱、壁の交換となると莫大な費用がかかります。
太陽光パネルからの反射や景観の問題によって周辺住民からの苦情が相次ぐと、最悪の場合太陽光発電設備そのものの撤去や移転を余儀なくされるケースもあります。太陽光発電は十分な日射量がある場所に設置するのが前提であり、反射光の防止や景観への配慮が必要であるからといってカバーや屋根を付けることはできません。
撤去や移転となると一から設置場所を検討し直す必要があるほか、設備の撤去・運搬・新たな場所への設置にも莫大なコストを要します。
自家消費型太陽光発電設備の導入にあたっては、上記で紹介したようにさまざまな失敗例があり、リスクがつきものです。では、このような失敗を防ぐために役立てられる対策はないのでしょうか。特に押さえておきたい3つのポイントを紹介しましょう。
太陽光発電の導入にあたって、はじめに注意すべきポイントとしては設置場所の選定が挙げられます。十分な日射量が確保できるか、土地や屋根、屋上の広さなどの問題はもちろんですが、周辺環境も十分に確認しておくことが重要です。たとえば、周辺に高層ビルやマンション、その他高い建物が建設される予定はないか、時間帯によって太陽光パネルの設置場所に影ができないか、といったポイントは最低限押さえておきたいところです。
また、野立ての場合でも、周辺に高い樹木や植物がないか確認しておくことが重要です。草木が生い茂っている場所に設置した場合、草刈りや樹木の選定といったメンテナンスが不可欠となります。
太陽光発電設備の導入にあたっては、事前のシミュレーションが極めて重要です。自社の事業にとって必要な発電量はどの程度か、そのためにはどれだけの規模の発電設備を導入しなければならないのかを計算します。設置場所や屋根の角度、地域に応じて異なる天候特性なども加味しなければ正確な発電量を計算することは難しいものです。
また、近隣住民とのトラブルを未然に防ぐためにも、反射光のシミュレーションも欠かせません。設置場所やエリア、屋根の角度、周辺にある建物の高さなどによってもシミュレーション結果は変わってくるため、高度な専門知識が不可欠です。
太陽光発電設備の設置後のトラブルを防ぐためには、信頼できる施工業者を選ぶことが何よりも重要です。施工実績が少ない事業者は、設置ノウハウが少なくトラブルに対応できない可能性もあります。
信頼できる施工業者であれば、設置場所の検討から発電量や反射光のシミュレーションまで幅広く対応でき、野立てから屋根・屋上への設置までさまざまな施工が可能です。
今回紹介してきたように、自家消費型太陽光発電の設置にあたってはさまざまな要因によってトラブルが引き起こされる可能性があります。
トラブルを認識していながら放置していると、やがて大きな事態に発展することも多いことから、信頼できる業者を探し早めに対策を講じておくことが重要です。